疑心 『2001年宇宙の旅』 「能」

■自分の主張が概ね正しいと信じている場合であっても、人と言い争うのは、気持ちいいものではない。特に、“言った言わないの議論”は不毛で、時間と体力を浪費するだけ。

そうした揉め事で、悲しいのは、揉めた相手との関係が途切れることだけではない。むしろ、これから仕事で会うすべての方々(既知の方々も含む)とのコミュニケーションにおいて、言質を取られぬよう、まるで地雷を除けながら一歩一歩進んでいくかのような、疑念と先読みをベースにした振る舞いをしてしまうかもしれないことだ。

大げさな例かもしれないが、政治家の皆さんが、持って回ったような、あるいは、結局何も言っていないに等しいようなコメントをする気持ちがいくらか分かる。彼らの喋りがああいう語法になる理由は、考えていることを「いかに言うか」よりも、命取りになるような発言を「いかに言わないか」に最大限専心せざるを得ないからだろう。

■アトリエKUUの熊沢さんにお会いする。悟りを開いかのような穏やかな方。『2001年宇宙の旅』は「能」に似ている、という興味深い指摘をされる。
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