ETV特集第 ロシア 亀山郁夫

ETV特集第216回(3月2日)「ロシア・歴史は繰り返すのか〜亀山郁夫 “帝国”を読み解く〜」を観る。

東京外国語大学学長の亀山郁夫さんがロシアを訪れ、インタビュー取材し、ロシアの政治状況や国民性をレポートする番組。分かりやすい図式、バランスのいい取材先のセレクション、丁寧なインタビューで、日頃馴染みのないロシアに関して、勉強になる。こういう番組を観ると、NHKに受信料を払っている価値を感じる。

内容は決してロシアの明るい将来を予見させない。番組によれば、国が自由化・民主化されると、それに乗じてロシア社会にはテロや犯罪が横行し秩序が保てなくなるので、結局、国民自ら“強い国家”(専制政治)を求めてしまう。番組中でインタビューされた映画監督ソクーロフも、「近い将来に、ロシアで国民主導の民主主義が実現される可能性はないだろう。それが、実現されるには、『人道的な指導者』と『(法的に認められてた)反対勢力の存在』の二つが必要だが、それは望めない」というようなことを語っていた。悲しい話である。

そして番組では、“任期満了のプーチン大統領の後継者、メドベージェフが大統領に就任すると、ロシア社会はどうなるか”を予感させるストーリー。
キーワードは、「歴史は繰り返す」。
で、以下の図式が提示されていた。

19〜20世紀:アレクサンドル2世(改革と自由)→アレクサンドル2世(専制政治)→ニコライ2世(リベラル)→ロマノフ王朝崩壊。
20〜21世紀:ゴルバチョフエリツィン(改革と自由)→プーチン専制政治)→メドベージェフ(リベラル)

ただ、メドベージェフ当選後もプーチンの権力は維持されそうなので、完全に上記2例が重なるかは疑問。

因みに、上記の図式における前者の社会を生きたドストエフスキーは、「改革を支持」→「皇帝への共感」へと思想を変遷させており、ロシア国民の当時の心情を象徴しているという、亀山氏らしい発言が印象的。

現在ロシアは、10%の高額所得者層、25%の中間層、その他ギリギリの生活をする人々という経済状況で、歪んだ資本主義は進行中だとか。強権政治という枠の中での“見せかけの民主主義”が現状のようだ。グローバリゼーションの波は、“強い国家”でも、抗いきれない模様。

「パンか自由か」ではなく、「パンも自由も両立する日」はロシアに訪れるのか。先は、長そうだ。

http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html