JUNIOR DESIGNER AWARD  KEIKO+MANABU  『告白』  一年

ここ10日くらい。

■代官山ヒルサイドテラスにて、「MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD」を見る。
興味を引かれた作品は、「立体凧の造形研究」(黒沼宏美/東北芸術工科大学)の一点のみ。直径40cmくらいのアクリルの筒の下から送風機で風を吹き上げて、立体造形物を浮揚させる装置が3種類。おそらく時間を掛けた試行錯誤と厳密な計算の上に成り立っている作品なのだろう。筒の中を立体凧が上下するという形式はしっかり固められているが、それらの装置は微妙に毎回違う振る舞いをする。だから見ていて飽きない。モノそのものをデザインするというより、ルールをデザインするという視点に立っているようで、印象に残った。
その他の出展作品は、最初から「現代アート」をつくろうとしているような印象を受けた。つまり、作り手の頭の中に「現代アートとは、こういう感じのもの」という既成概
念があって、そこに落とし込んでいるように見える。悪い言い方をすれば、既製の現代アート劣化コピーの域を出ない。
もちろん、「誰もやっていないことをやる」ということ自体を目的にしろと言いたいわけではないが、もう少し「想定の範囲外」の作品に出会いたかった。
http://www.m-kagaku.co.jp/mcjda/index.html

DIESEL DENIM GALLERYにて、KEIKO+MANABUの「Heart of Shapes」展を見る。紙でできた空間。この作品自体が、何かの展示会場のように見える。
http://www.keikomanabu.com/
http://www.diesel.co.jp/denimgallery/index.html

■拡張された「クロムハーツ東京」のショップに立ち寄る。ブランドの世界観と空間のゆとりやスケール感が一致していて好感。1階のバスケットコートは、ヒップホップな印象で、ちょっとこのブランドにそぐわない気もするが。店内には、ロックンロールな雰囲気の家族連れがいた。

ブックファースト西新宿で、気になっていた本をまとめて見る。休刊になった「ダカーポ」の恒例企画だった「今年最高の本」が特別号として店頭に並んでいるのを見つけ、パラパラ見る。今年、気になっていて買わずじまいだった小説『新世界より』(貴志祐介)、『告白』(湊かなえ)が多く言及されており、やはり気になる。読んでみるか。

■新横浜キュービックプラザを見る。JR東海系の駅ビル。新幹線の待ち時間に立ち寄れそうな店や、日常の買い物ができるスーパーや、ちょっと大きな買い物ができるビックカメラなど、まんべんなくテナントが入っている。
最近、都心に遊びに行かず、地元で遊ぶ人が増えていると聞くから、こういう施設のニーズもあるかもしれない。
http://www.cubicplaza.com/

■毎朝のようにラジオから「新しい歌」(秦基博)が流れてくる。曲も歌詞もいい。

■2008/12/28付けの日経新聞「経済図書ベスト10」にて、経済学者の駒村康平さんが今年話題になった経済図書に解説を書いていた。1年の経済的事象を踏まえて各書籍がどいういう意味を持つのか、大変平易にコンパクトにまとめられている。特に、今年の書籍だけでなく、「大きな政府」や「小さな政府」の論拠となったケインズハイエクの著書もさりげなく紹介し、記事に厚みを出している。書籍選びの参考になると同時に、記事づくりの参考にもなる。

■知人のデザイン事務所の忘年パーティーへ。甲斐荘さん、清水慶太さん、平社さん、小林幹也さん、IBMの方、トッパンコスモの方、自動車関連の出版社の方などなど、いろんな方々と楽しい時間を過ごさせていただく。
お会いする度に思うが、平社さんは、幾人かの人が集まった場で議論のベースをつくれる稀有な人だ。つまり、会話の場でもクリエイティブなわけだ。こういう方に、ごくたまに会いする。平社さんに「完璧にイメージできれば実現する」という話を聞き、最近ある本で読んで分からなかった「リミットをはずせ」の意味がわかった。
清水さんの“超能力”も見せていただく。

■年内に、2月号の入稿を一通り終える。毎年12月は、いわゆる「年末進行」という前倒しスケジュールで、通常の1.5倍くらいのスピード感で動くが、不思議といくつかのパーティーに顔を出したり、いろんな方々に出会えた1カ月であった。
次号の直接の取材と関係ない方々とお会いしたり、いろいろなものを見たりする、こういう「蓄え」の時間は重要だ。
あと1年くらい、「不況モード」でコスト(時間、お金、手間)を切り詰めて恐慌を乗り切るのも重要ではあるが、その状況下でも、組織や個人が「蓄え」「貯蓄」「投資」(株とかではなく)をしておかなければ、不況が過ぎ去った後、勝ち残れない。出版に関して言えば、もしかすると、不況が過ぎ去って少し経ってから、「蓄え」をしておかなかった雑誌が休刊になるケースが出るような気もする。(もう既に、相次いで倒産や休刊はあるが)
さて、今後、どう蓄えていくか。換言すれば、どう雑務を軽減し、重要なインプットとアウトプットだけに時間を投じられるようにするか。編集長との企画打ち合わせの際も、こうした話題になり、目指す方向性は一致していることが分かったので、自分のいる環境をなんとか生き残る組織にしていきたい。クリエイティブな組織づくりに関する書籍を編集長にいくつか教えてもらったので、正月に目を通しておこう。

いずれにせよ今月は(そして今年は)、ささやかにではあるが確実に僕にとって何かが好転した素晴らしい1カ月(1年)であった。
今年は、出張でミラノや北京や国内のいろいろな街へ行ったり、素晴らしい方々に出会ったり、仕事仲間に支えられたり、恵まれた幸せな一年を過ごす。新しいこともいくつか始めた。
みなさん、どうもありがとうございました。2009年も引き続き、どうぞよろしくお願い致します。最高の新年をお迎えください。