『できそこないの男たち』

『できそこないの男たち』(福岡伸一光文社新書)を読む。

本書を読み終えると、人間を含め、生き物を見る目が少し変わるかもしれない。特に男性におすすめの一冊。

生物の基本仕様はメスで、オスは、メスのDNAをシャッフルするなどのために生み出された“使い走り”である。そんな話が、読みやすいストーリーと分子生物学の知見で展開される。

人間の世界でも、女性より男性のほうがガンに罹りやすく平均寿命も短いという事実が納得できる。

そういえば、先日のニュースで、トキを佐渡島に放鳥したら、その後8羽の存在が確認されて、雄4羽は佐渡島に残ったままで、雌4羽は本州に渡ったと報道されていた。こうした雄の不甲斐なさ(?)も、本書を読んだ後では納得できる気がする。

では、なぜ弱くて“使い走り”だったはずのオスが、人間の世界では、社会(政治や経済や産業という意味で)を動かす主導権を握っているのだろうかという疑問に行き着く。著者は、その疑問に対しても考察を提示してくれているのがうれしい。

できそこないの男たち (光文社新書)

できそこないの男たち (光文社新書)