『人は勘定より感情で決める』(柏木吉基/技術評論社)を読む。
人は感情に左右されて案外簡単に非合理な選択をしてしまう。その非合理な選択を解析してみようという、最近賑やかな行動経済学に関する本。
どんなパターンの誤謬によって人は操られてしまうのか。そのパターンを、日常の買い物や宝くじ購入などのシーンを例に分かりやすく解説してくれる。
しかし、解説されているパターンはどれも、日頃ある程度批判的な消費者であったら見抜けそうな情報の罠なので、新しい発見はあまりなかった。例えば、宝くじの広告を出す際、「0.00001の確率で当たります」と言われるのと「40人に当たります」と言われるのでは、どちらが購買意欲をそそるか、など。
ただ、一つ面白かったのは、それぞれのパターンが専門用語で何という名称で呼ばれるかが書かれている点。「代表制ヒューリスティック」「平均回帰」「アンカリング」など。こうしてやや複雑な概念を一言で言い表す名称を知っておくことは、けっこう大事なことだと思う。なぜなら、その名称を使うことで、さらに複雑な思考やメタレベルの思考ができるようになるから。