3週間くらい経ってしまったが、映画「人生、ここにあり!」(ジュリオ・マンフレドニア監督/2008)を見た。素敵な映画であった。

精神科病院やその患者をある程度ユーモラスに描きながら、嫌味がない。むしろ温かさを感じる。
舞台は1980年代のイタリア。イタリア全土で実際に精神科病院を廃絶したという事実がベースになっている。
 
この映画で描かれているのは精神疾患の人々であるが、もっと広く捉えれば、この映画は、社会的弱者と健常者(その線引きは必ずしも明確ではないが)がどう共存していったらよいかを問うているように感じた。精神疾患の患者でなく、障がい者や老人に置き換えてもよいかもしれない。
社会的弱者に対して、大きく分けると二つの働きかけがありそうだ。一つは、「彼らを隔離すること」。もう一つは、「彼らが自発性、参加意識、尊厳、責任などを感じられる形で社会参加できる場を広げていくこと」。
この映画は後者の試みを描く。元患者たちが、自分たちの特技を生かして仕事をし、それによって稼いだ賃金で自分たちの好きな部屋に住み、好きな家具を買う。ときには、遊びにも行く。恋愛もする。そうしたシーンが活き活き描かれていて印象的であった。
 
なお、原題は「Si Puo Fare」。主人公ネッロが、元患者たちからのビジネスの発案に対して「Si Puo Fare(できる、やれる)」を連発するシーンがある。非人称主語で言っている点が、この映画にとって大事であるのではないかと感じたが、誰かイタリア語が分かる人にそのニュアンスを聞いてみたい。

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