広島建築ツアー

xsw23edc2008-02-13

広島二日目。

平和記念公園を一人でブラブラした後、広島在住の建築家・宮下さん(マイmixi:くま氏さん)のナビゲートで、広島で見たかった建築を効率的にご案内いだたく。

■国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(設計:丹下健三

半時計まわりの長いスロープで地下へと導かれ、円形の死没者追悼空間へと辿り着く。具体性(資料性)と抽象性(空間体験)のバランスが大変良いため、こうした施設にありがちな押し付けがましさがなく、自然に資料的な事実へと意識が向く。収穫であった。

くま氏さんの愛車BMWに乗り込んで、まずは広島市環境局中工場へ。

広島市環境局中工場(設計:谷口吉生
海際に建つ清掃工場で、休日でも一部が公開されており、自由に見学できる。平日に予約して行けば、さらに内部まで案内してもらえるようだ。

内部の複雑な機構に相反するように、外観はいたってシンプルという佇まいが、まるでパソコンのよう。
清掃工場の背後には、海が広がり、遠くに工場群があり、その背景には山並みが見える。自然の風景と極度に人工的な風景が重なり合う、独特なランドスケープ

広島市西消防署(設計:山本理顕

こちらも、驚くほどにオープンな施設。予約なしで行っても、自由に見学できる。清掃工場につづいて、社会科見学の様相を呈してきた。
ルーバーで構成されたファサードの裏側には、各フロアにデッキがあり、そこを自由に歩くことができる。構成の明快さとは裏腹に、建設時には、おそらく消防署の方々や設計に携わった方々が相当の苦労をしたであろうと感じる。

広島市立基町高等学校(設計:原広司

広島城の近く。京都駅のような校舎。高校というより、大学の校舎のような巨大さ。エスカレーターまである。
しかし、生徒たちが立ち話したり、座り込んだりできそうなオープンスペースがあり、楽しい高校生活が送れそうに見える。そして、こうした“圧倒的な空間”の中で過ごすというのは、精神的に落ち着くのではないかと感じる。

■世界平和記念聖堂(設計:村野藤吾

原爆犠牲者の慰霊をきっかけとして建てられ、1954年に竣工している。ドイツ、ベルギー、スペインなど各国からステンドグラスや祭壇や扉が寄贈されたそう。
これほどの規模と質感をもつ聖堂が日本にあるという事実に驚く。祈りには、このくらい静謐で“圧倒的な空間”が必要だろう。
外壁は、おそらく意図的に荒い仕上げになっており、とても半世紀前に建ったとは思えないほど、時の経過を感じさせる。
スタッフの方が親切に内部を案内してくださり、塔の最上部まで階段で登らせてもらう。随所に和風の意匠も。

広島市現代美術館(設計:黒川紀章

比治山公園の小高い丘の上に建つ。
建物の底部の自然素材が、上部に向かって徐々に人口素材へと変わっていく構成方法や、エントランスのドーナツ状の部分の切れ目が爆心地のほうを向いていることなどを、くま氏さんから教えてもらう。

内部では、広島市立大学の卒業・修了作品展をやっていたので、足早に見る。ひとつ気になる作品があった。「何を想う」(制作者:丸尾浩輝)というタイトルの油絵。セーヌ川沿いと思しき風景の中にネガティブな表情をした数人の人間が描かれている。人を引きつける強い力がある。

最後に、駅ビルの2階の、いくつものお好み焼き屋が並ぶフロアへ。行列ができている「麗ちゃん」という店で、お好み焼きを食べ、くま氏さんと別れる。
わずか、4時間半くらいで、大変効率的にまわることができた。
くま氏さん、本当にどうもありがとうございました!!!

http://gourmet.yahoo.co.jp/0005613226/M0034000026/

新幹線で東京へ。ほとんど寝ているうちに、4時間で品川着。


【追記 2008/02/12】
ところで、ホテルの部屋でテレビを見ていたら、NHKのBSで「ゲイツとバフェット 後輩と語る」というアメリカのドキュメンタリー番組を放送していた。ビル・ゲイツと、投資家ウォーレン・バフェットが会場の学生らから質問を受け、対談しつつ応えていくという内容。
ユーモラスでありながら含蓄と説得力のあるバフェットの発言を、いくつもメモしてしまう。

その中で、「一つだけ望みを叶えてもらえるとしたら?」という質問に対し、バフェットが「世界中から核兵器をなくしてほしい」と応えた。偶然にも広島のホテルで見ていたこともあり、はっとした。

http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/080208.html