『読書について』(ショウペンハウエル/岩波書店)を読む。
今から200年前のドイツに生きた思想家、ショウペンハウエルが、読書や執筆について記した小編。
新刊書の洪水に流される民衆を憂い、母国語(ドイツ語)の乱れを叱り、日銭を稼ぐために書く「非良心的な三文文筆家」を批判するというオヤジっぽい内容だが、簡潔でインパクトのある文章や巧みな比喩表現は、さすがに他人を喝破するだけのことはあり、ぐっと引き込まれる。
思索に関しては、「読書は思索の代用品にすぎない」。著作に関しては、「考えぬいた明瞭な思想」を過不足のない「平明な言葉」で精緻に書け。そして、読書に関しては、「悪書は精神の毒薬」、「あらゆる時代、あらゆる民族の生んだ天才の作品だけを熟読すべき」、「重要な書物はいかなるものでも、続けて二度読むべき」など、至極真っ当な主張。
文筆や出版を生業としている方は必読だろうが、そうでなくとも、“たまには大御所に気持ちよく叱られて背筋を伸ばしたい”という方にはオススメである。
近年日本では、年間7万点の新刊書が発行される。一日あたり約200冊だ。ショウペンハウエルの言うように、悪書を読んでいる時間などない。
- 作者: ショウペンハウエル,Arthur Schopenhauer,斎藤忍随
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1983/07
- メディア: 文庫
- 購入: 27人 クリック: 297回
- この商品を含むブログ (181件) を見る