『孤独の発明』

■『孤独の発明』(ポール・オースター新潮文庫)を読む。
中身は前後半に分かれている。前半の「見えない人間の肖像」は大変面白く読んだが、後半の「記憶の書」は、いまいちついていけず、途中で断念。
「見えない人間の肖像」は、オースターの父らしき人物について詳細に描写されている。と同時に、その人物を通して、「非在の人」一般について描出しており、普遍性を得ているように感じる。
「非在の人」とは、そこにいながら、そこにいないような人のこと。「非在の人」は、その後のオースター作品に何度か登場する。例えば、『鍵のかかった部屋』に登場するファンショーの父とか。
ここで描かれているオースターの父ほど非在感に満ちた人間は珍しいかもしれないが、なぜかうまく他人や社会と関係を取り結べない人や、どうしても「いま・ここ」に心を留めておくことができない人は、世界中に少なからずいるのではないか。まるでつねに幽体離脱してしまっているような人が。
そんな人にとって、大きな共感と束の間の安堵を与える作品と言えそうだ。それは、文学の大事な機能だろう。


最近のこと、いくつか。
■JAPAN SHOPへ弊社が出店。店番などをする。読者の方々と直に接することができ大きな収穫。来店してくださった皆様、どうもありがとうございました。
セミナーを聞く。
■大宮へ行き、とんかつ屋さんの取材。
http://r.gnavi.co.jp/e888200/

■セシルバルモンド展を見る。バルモンドの思考回路に沿った会場構成で、大変分かりやすい。最後の大きな部屋(靴を脱ぐ部屋)は、バルモンドの世界観でつくる枯山水と言えそうだ。別のものを自然に見立てるという意味で。

■銀座にて「YAMAHA」「F.CLIO」などを見る。
六本木ヒルズ内のサルバトーレで食事。味もサービスもいい。


孤独の発明 (新潮文庫)

孤独の発明 (新潮文庫)