創刊700号記念 spectre JINS 西村佳哲さん

■2011年4月号「創刊700号記念 特別企画/商空間の歴史と未来を考える」にてお借りした資料や写真をお返しするため、浜野安宏さんの事務所、北原進さんの事務所、内田繁さんの事務所、大熊俊隆さんの事務所をめぐる。大熊さんは、70年代、80年代、90年代を思い出し、「おお、この人、懐かしいねえ」とおっしゃりながら、インタビューページをゆっくりめくってくださったので、僕としては大変嬉しかった。
当時を知る読者の方々には「懐かしいなあ」と楽しんでいただき、当時を知らない若い読者の方々には「へえ、店舗デザインにこんな時代があったのか」と新鮮な発見をしていただけたら、なによりである。
北原さんからは、「建築雑誌がどんどんなくなってしまったけど、商店建築はここまで残ったんだから、がんばってよ」と励ましの言葉をいただく。
震災の影響で多くのプロジェクトが中断になってしまい、店舗デザイナーの方々にとっても厳しい時期が始まったようだ。そうした時期にもデザイナーの方々の役に立つ誌面をつくらねば。
http://www.shotenkenchiku.com/Monthly/bk_number/1104/index.html
 
六本木ヒルズ内に3月10日オープンしたサングラス専門店「spectre JINS」(ウエストウォーク4階)へ。コンパクトな面積の中に、シンプルで視認性の高い什器を設置したお店。壁面什器の両サイドのカーブが、客の自然な回遊を促す。ファサードの一部がミラーになっているのは、メガネの試着に役立ちそうで、気が効いている。
http://www.jins-jp.com/spectre/
  
 
■青山、表参道、六本木近辺を歩き、疲れたので途中でパークハイアットホテルのロビーで少々休憩。いつもなら海外からのビジネスマンや旅行客で賑わっているはずのホテルのロビーも、閑散としている。特に、外国人やはり、世界の人々が日本への渡航をキャンセルしているせいか。
 
■リビングワールドを主宰する西村佳哲さんに、取材でお話をうかがう。「プレデザイン」「センスウェア」「名付けられる前の、新しい職能の発生」などにお話が及び、柔らかい語り口ながら、刺激的であった。
西村さんは、「デザインの技法以前にできること」「自分の実感を大事にする」といったスタンスを軸に、大学でプレデザインの講義をなさっている。
“〜〜論”や“〜〜主義”などといった既成のロジックは、それはそれで便利で重要ではあるが、そうした頭で考えたことは、他の“論”や“手技”と容易に交換可能だと西村さんは言う。それよりも、自分の実感を根拠とする考えの方が、ブレにくく信頼に足る。
そのような自分の実感をベースにするという考え方は、西村さんの「iメッセージ」や教育論へも発展する。「iメッセージ」は、自分を主語にした物言いのこと。西村さんはそれを推奨する。たとえば、「イジメは良くない」というのは、三人称を主語とした物言いだが、「僕はイジメは嫌いだ」という言い方は「iメッセージ」。また、教育の場のおいて、西村さんは極力、既成の知識を学生に教えることよりも、学生が自ら気付くための手伝いをすることに注力する。
一方、センスウェアは、「生きている世界を感じる装置」「自分の感覚の拡張装置」といったようなプロダクトや仕掛けを指している。
「プレデザイン」「センスウェア」も、「既に存在する物事をいかに鋭敏に掬い上げるか」という点において共通している。
http://www.livingworld.net/nish/
ところで、西村さんの著書でも述べられているが、西村さんはデザインファームIDEOからも大きな影響を受けたという。
http://www.ideo.com
西村さんの著書にも、共感する部分が多くあったので、その感想も後日改めて書きたい。
 
西村さんの発想に全面的に共感した。偶然、数ヶ月前から、僕自身も、仕事や勉強の目標や予定を立て、それを自分自身に外部から押し付けて実行させようとしても、あまり成果が上がらないことに気付き始めた。それよりも、体調と精神状態をベストコンディションにしさえすれば、あとは身体の内側から自動的に、仕事や勉強や遊びへの意欲が湧いてくる。その流れに身を任せたときは、集中力が高く、しかも長く持続する。だから最近、そんな体内の自動装置に自分の行動をなるべく委ねるようにしている。もっと大きな枠組で言えば、最近、自分には(あるいは人間には)思いの外、自由意志など存在しないのだと感じる。極端に言えば、リチャード・ドーキンスの言うように、僕の身体は単なる遺伝子の乗り物に過ぎない。そう感じている。僕にできるのは、その乗り物をベストコンディションにチューンアップしておくことだけだ。(考えようによっては、目標達成能力の低い自分自身への言い訳かもしれないが。。。)
 
■トーヨーキッチンの名古屋ショールームが、橋本夕紀夫さんのデザインで4月にリニュアルオープンする。というお知らせをトーヨーキッチンからいただいた。