この5日間で、繰り返し50回、聴いてしまった。

中毒になった。。。
素晴らしい。
とても素晴らしい音楽に出会った。
 

何の話かというと、アマゾンで予約注文していたCDが先週届いたんです。
「スベリタイフーン」というタイトルのCD。
6曲で構成されたコンパクトなアルバムです。
2組のロックバンドの曲が3曲ずつ入っています。「セクシーパンサー」と「助っ人集団☆石井ジャイアンツ」というバンド。コミックバンドみたいなバンド名だけれど、真面目なロックバンドのようです。ちょっと笑いの要素は入っているんだけれど。
 

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6曲に共通することが、少なくとも2点あります。
一つは、メロディーについて。
6曲とも、メロディアスでキャッチーで、覚えやすいという点です。
もう一つは、歌詞について。
6曲とも、本気で頑張っている人間のカッコ悪さや情けなさを、愛情に包んで熱く歌っているという点。
そんな共通点があるので、2組のバンドの6曲が、一体感をもって一つの世界観をつくり出しています。
  

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せっかくなので、もう少し細かく見てみましょう。
   
どの曲も、歌詞がシンプルで、すんなり頭に入ってきます。
歌詞の内容は、3曲が「恋愛」についてで、もう3曲が「夢、目標」について。このバランスがいいですね。
特に、4曲目の「結果オーライ」という曲の歌詞は、最高に心に沁みます。好きな女の子と初デートする時の男性の心境を歌った歌詞です。1曲聴く間に、「そうだよ、そうだよ、そうだよな」と、10回は頷きました。
歌詞の一部を引用しましょう。
「このまま二人の関係も別に悪くないなんて 弱気になってる僕に自分で喝をいれながら 君と手をつなぐタイミングを 測ってるうちに駅はもうすぐそこ こんな時に手汗が止まらないよ ふいてもふいてもとまらないよ」
なんと、的確に表現しえているのだ。
 
デートの前日と当日の心境。多くの男性が、人生の中で、一度ならず何度も体験したことがある心持ちでしょう。自分自身に心当たりがあるからこそ、聴いていると、恥ずかしくなってきます。とてもフレッシュで青い世界です。きっとあなたも、自分の恋愛のいくつかのシーンを思い出すはずです。そして、更に気づくはずです、「初デートにおけるこの青くて必死で恥ずかしい心境は、年齢に関係ない。何歳になっても味わう感情だ」、と。そう、この心境は、中学生や高校生の時代だけの話ではないのです。20代になっても、30代になっても、もしかすると、老人になても、好意を寄せる誰かとの初デートでは、この抑え切れないドキドキ感やプレッシャー、そして、自分の言動の一つひとつに過剰に意識的になってしまい、「いつ手を繋ごうか」「いつ気持ちを伝えようか」とタイミングをはかりながら、どんどん時間だけが過ぎていく、あの焦りの気持ちを感じ続けるでしょう。そして、「恥ずかしいし、失敗するかもしれないから恐いけれど、それでも前に進まなくては!!」という推進力に背中を押されて、僕たちは小さな勇気を振り絞って行動を起こす。
初デートにおける、このプリミティブで普遍的な感情が、思いっきりストレートに歌われています。それが、「結果オーライ」という曲の魅力です。
   

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さて、先ほど、3曲が「恋愛」に関する歌で、もう3曲が「夢、目標」に関する歌だと書きました。鋭い方は、ここで気がついたかもしれません。
「恋愛」と「夢、目標」には、共通点があります。
恋愛の初期に僕たちは、「ドキドキ感」「プレッシャー」「焦り」「恥ずかしくて恐いけれど、前に進まなくては、という推進力」を感じます。そして、僕らがこれらの感情を感じるのは、「恋」や「好きな女性」を目の前にした時だけではない。「夢」や「目標」を目の前にした時にも、同様にこれらの感情を味わいます。
「ドキドキ感」「プレッシャー」「焦り」「恐いけれど前に進まなくては、という推進力」、こんな感情が渾然一体となった高揚感に包まれて僕たちが生活している時、その姿は、第三者から見れば、恥ずかしい光景かもしれません。きっと、相当に恥ずかしくて痛々しくてカッコ悪い姿でしょう。特に、この20年くらい、若年層を中心に、頑張ることに伴う恥ずかしさやカッコ悪さを、強く忌避する傾向があります。皆さんのまわりにもいませんか? 「失敗したら恥ずかしいから、夢を追いかけるのはやめます」「振られたらカッコ悪いから、好きな女性に思いを伝えるのを諦めます」と言う人。
でも、青くて恥ずかしくて痛々しくてカッコ悪い自分になることを忌避して、失敗しない人生だけを選んだら、おそらく何も得られない。
頑張ることに伴うこの恥ずかしさやカッコ悪さを、温かい愛情をもって肯定的に見つめている点が、「セクシーパンサー」と「助っ人集団☆石井ジャイアンツ」の楽曲に共通しています。少なくとも、このアルバムの6曲においては、共通しています。
 
 

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歌詞についてばかり書いてしまったので、メロディーについても書いておきます。
6曲とも、シンプルでアップテンポで、少し哀愁漂うメロディーなので、頭に残りやすいです。パンクロックとフォークソングを融合したような曲調です。
といっても、イメージしにくいかもしれませんね。では、実験してみてください。試しに、このCDを3回聴いてみてください。どうなりましたか? 3回目には、鼻歌を歌ったり、口ずさんだりしていませんでしたか? あとは、中毒になっていくでしょう。とてもキャッチーで親しみやすいというわけです。
正直に言うと、2、3回聴いたら、ひとまず棚にしまっておくことになるだろうと思っていました。まさか5日で50回も聴くとは思っていませんでした。
 
メロディーに関して、もう一つ感じたことがあります。それは、歌詞の内容が盛り上がる場面で、メロディーも盛り上がるので、非常に強い高揚感を味わえるということです。もしかすると、これはポップスの曲作りにおけるセオリーなのかもしれませんが、そんな歌詞とメロディーのシンクロ具合が、とても気に入りました。
 
CD全体に漂う「手づくり感」もいいです。良くも悪くも、メジャーなミュージシャンは、曲作りにおいてもレコーディングにおいても、膨大な制作費と技術を投入して緻密に作りあげていくのでしょう。それはそれで、素晴らしいことだと思います。一方、このCDは、そうではないように感じます。いわば、「雲の上の存在であるミュージシャンが歌っている」という印象ではなく、「隣の兄ちゃんが歌って励ましてくれている」という印象が漂っています。
この敷居の低さに関しては、好き嫌いが別れるかもしれません。僕は、この敷居の低さゆえに、「セクシーパンサー」と「助っ人集団☆石井ジャイアンツ」に親近感を感じました。
  

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せっかくなので、各曲について、簡単に感想を書いておきましょう。

【01:魔法のうた】(セクシーパンサー)
おそらくこの曲は、音楽に励まされ、音楽を志すセクシーパンサーのメンバー自身の体験を歌っているのではないでしょうか。そう思わせるリアリティーがあります。メロディー、歌詞、演奏、歌唱といった各要素が調和した名曲だと感じます。

【02:A型彼女とB型彼氏】(助っ人集団☆石井ジャイアンツ)
ユーモラスなラブソング。雰囲気としては、アニメのエンディング曲に似合いそうです。
一見ジョークのような曲なのだけれど、重要なことが歌われています。歌詞の一部を引用しましょう。
「A型彼女とB型彼氏 合わない2人が出会い恋した 好きを理由に我慢し妥協し 2人で作る恋物語
これが、サビの歌詞です。僕は、とても心打たれました。
「好きを理由に我慢し妥協し」という部分が重要です。この部分を読んで「えっ?」と感じた人もいるのではないでしょうか。つまり、そう感じた人は、「我慢と妥協が必要なら、そもそもそんな相手を好きにならない。だから、『好きを理由に我慢し妥協』するという順序はありえない」と考えているのではないでしょうか。
「我慢と妥協が必要なら、そもそもそんな相手を好きにならない」という考え方は、確かに合理的ではあるかもしれません。けれど、そのように考えて誰かと付き合い始めた場合、必然的に、「我慢や妥協が必要になったら、別れましょう」という結論を招きます。今日、こうした合理的で点数制のような恋愛観が、多くの人から恋愛と結婚を遠ざけているように見えます。
というわけで、「好きを理由に我慢し妥協し」という部分に、恋愛の非合理的かつ本質的な要素が表現されていると感じ、心を打たれました。
ちなみに、合理的で点数制のような今日的な恋愛観という問題に関しては、『東京タラレバ娘』(東村アキコ講談社)、『婚活1000本ノック』(南綾子、新潮社)、『結婚』(橋本治集英社)を読んでみてください。どれも最高に面白いです。
おっと、話が逸れました、すみません。
  
【03:トップランナー】(セクシーパンサー)
これも「01:魔法のうた」と同様、夢に向かって頑張る人の歌で、メンバー自身の心境が多分に反映されているように見えます。ストレートでエネルギッシュな一曲です。
 
【04:結果オーライ】(助っ人集団☆石井ジャイアンツ)
メロディーも素晴らしいけれど、先ほど書いたとおり、歌詞がいい。好きな誰かとデートする時の、ドキドキや心境が余すところなく的確に描かれています。皆さんも、これを聴きながら、恥ずかしく、こそばゆい気持ちになって、ニヤニヤしましょう。「日本中の(世界中の?)男は、同じことを考えているのかもしれない」と、元気がでるはずです。
 
【05:アイラヴユー】(セクシーパンサー)
タイトルも歌詞もメロディーも、ストレートで情熱的。
そして、ちょっと悲しい曲です。
 
【06:東京タワー】(助っ人集団☆石井ジャイアンツ)
これも、名曲だと思います。温かくエネルギッシュなメロディーが耳に残ります。
歌詞は、おそらくあえて抽象的にして、何について歌っているのか、はっきり特定できないようにしているのではないでしょうか。けれど、前向きでポジティブなメロディーに引っ張られ、聴いている僕たちまで、なんだか清々しい気持ちになってしまう1曲です。
  
 

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僕としては、1曲目と6曲目が特に気に入りました。
「魔法のうた」と「東京タワー」は、名曲だと思います。
早くCMソングや、テレビ番組のエンディング曲に使ったほうがいいと思います。CMやテレビのプロデューサーの方々は、ライバルに先を越されないうちに、早めにどうぞ。(^ ^)
   

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最後に。
このアルバムを聴いて欲しいのは、以下のような方々です。
・夢に向かって頑張っている人。
・夢を諦めてしまった人。
・最近少し元気が出ないので、顔を上げて前を向きたいなあ、と思っている人。
・デート前でドキドキしていて、「誰かオレを落ち着かせてくれ」と思っている男子諸君。
・「初デートの前日や当日って、男はどんなことを考えているの?」と思っている女子の皆さん。
・ザ・ブルーハーツ、ゆず、エレファントカシマシウルフルズなどが好きな人。

だいぶ長くなってしまいましたね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

セクシーパンサー、助っ人集団☆石井ジャイアン
スプリットミニアルバム「スベりタイフーン」
全6曲/¥1620/WSRR-0001
 
曲目リスト
 01:魔法のうた
 02:A型彼女とB型彼氏
 03:トップランナー
 04:結果オーライ
 05:アイラヴユー
 06:東京タワー
 
http://item.rakuten.co.jp/es-toys/4519552104396/
http://sp.tower.jp/item/3782077

スベりタイフーン

スベりタイフーン