『発達障害に気づかない大人たち』

■『発達障害に気づかない大人たち』(星野仁彦/祥伝社新書)を読む。

本書を読み終えた読者の多くは、自分のまわりには思いのほか多くの発達障害の人がいると思い当たるかもしれない。そして同時に、自分自身が発達障害である可能性もあると思い当たる人もいるかもしれない。「オレは絶対に大丈夫」と思っている人こそ危ない。


アスペルガー症候群(AS)」「高機能自閉症」「注意欠陥多動性障害ADHD)」など、発達障害全般について大変わかりやすく解説した一冊。
ADHDでは、衝動性、新奇追求傾向、うつ病や不安障害も合併しやすい、などの特徴が挙げられる。ASでは、友達をつくり意欲がない、会話のキャッチボールができない、一つのことに異常なまでの興味を示す、協調運動の不器用さ、などの特徴が挙げられる。
特に、「不注意は、すべての発達障害者に共通する最も大きな特徴」(p54)。そして発達障害は、「本質的な原因は脳であり、心の問題ではない」(p29)。


なんとなくだが、近年、発達障害の人は増えているのではないかと感じるが、そうだとするとその理由は何だろうか。それも本書を手にした理由の一つ。
著者によれば、脳の機能障害が起こる理由として、主に遺伝的要因が考えられるそうだが、しかし、それだけでは近年の増加傾向を説明できない。そこで、重金属や環境ホルモンも要因かもしれないと注目されているそうだ。また、アメリカの研究では、食品添加物(特に人工着色料)が一部の子どもに多動症候群を引き起こすという仮設があるらしい。ビタミンやミネラルの欠乏も関連性が指摘されている。特に、食品添加物などは気になる。


大人の発達障害の治療で重要なのは、「本人の気づきと周囲の理解」(p171)だが、それが難しい。本人が「最後まで自分が発達障害であることを認めることができ」ないケースも多いようだ。
その理由は、「彼らが自分自身を客観的に観察できないためですが、もう一つの理由としては、思春期・青年期以降に合併しているうつ病などの精神疾患に隠され、原疾患の発達障害がわかりにくくなっているため」(p172)でもある。自体は深刻だ。
けれど、そう前置きした上で、著者は「発達障害は治療可能」(p170)と言い、いくつもの治療法や対処法を提示してくれる。読者には参考になるのではないか。
そういえば、先日読んだ『大人のアスペルガー症候群』にも、完治はしないが治療によって緩和は可能と書かれていた。

本人が現状を認識し正しい治療を受けやすくなるには、発達障害は決して後ろめたいことではなく、本人が認識すれば治療は可能であるという認識が社会に定着することが必要だろう。そうなるまで、どのくらい年月がかかるのか。

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)